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命の危険も招く恐ろしい病気!痛風の合併症とは

痛風の症状と言えば痛み。風が吹くだけで激痛が走ると言われることからも分かる通り、痛風は痛みとの戦いという印象が強い病気です。しかし実は、痛み以上に怖いのが合併症。痛風は様々な合併症を伴うことがありますが、それらの中には命に関わる病気もあります。ここでは、痛風によって併発の可能性がある合併症について詳しくまとめました。

腎臓と心臓には要注意!痛風が招く恐ろしい合併症

痛風の直接的な原因は高尿酸値。プリン体の多い食材やアルコールの過剰摂取、運動不足等を原因にして尿酸値が上がり、体内で結晶が生じて関節の痛みへと発展するのが痛風です。

尿酸値の上昇が直接的な原因となる病気は、痛風だけではありません。有名な症状としては尿路結石がありますが、尿酸値の上昇は様々な病気の直接的な原因となります(まとめて尿酸塩沈着症と言います)。これらは原因が同じ病気であるために、厳密には合併症とは言いません。

それに対して、尿酸値が直接的な原因ではないものの、尿酸値の高い患者や痛風を発症した患者に、特有に起こりやすい病気があります。こちらが、厳密な意味では合併症です。

以下では、尿酸を原因とした各種の病気(1)、および、尿酸を直接的な原因としていない各種の病気(2)について、まとめて合併症とし、それぞれの症状について詳しく解説します。

なお、以下に列挙する症状について1と2のどちらに分類するか、研究者によって見解が分かれる点をご了承ください。

尿酸を原因とした各種の病気<尿酸塩沈着症>

尿酸を直接的な原因とした各種の病気(尿酸塩沈着症)には、主に4種類のものがあります。

痛風関節炎

体内に尿酸が蓄積された結果、結晶を精製。その結晶を白血球が処理しようとする際に発症する発作(痛み)を、痛風関節炎と言います。発作の約70%は足の親指の付け根に発症。他にも、足の甲や足首、膝、くるぶし、他の親の指の付け根、手の指の関節、手首、肘などに発症することがあります。痛みや腫れは1週間少々で収まり、以後は何事もなかったかのように無症状になる点が特徴。

痛風結節

痛風性関節炎の発作を繰り返していると、やがて結晶の蓄積量が増大して炎症が慢性化します。結晶が蓄積した場所には大小の瘤(コブ)が現れることがありますが、この状態のことを痛風結節と言います。

ニキビ大の瘤が耳に生じることもあれば、ゴルフボール大、リンゴ大の大きな瘤が関節に生じることもあります。

痛風腎

尿酸によって生成された結晶が腎臓に沈着し、炎症を起こした状態のことを痛風腎と言います。基本的には慢性腎臓病(CKD)と症状が同じであり、治療も慢性腎臓病に準じて行なわれます。諸説ありますが、一部では痛風患者の14%程度が痛風腎を併発しているとの説もあります。

尿路結石

尿酸の結晶が尿路に生じた状態を、尿路結石と言います。結石によって尿路がふさがれると、激しい痛みを発症。細菌感染を起こして高熱に至る場合もあります。なお尿路結石は、高尿酸血症を原因とした痛風の仲間と考えられがちですが、尿路結石を発症している約80%の患者において、その発症原因は不明とされています。

尿酸を直接的な原因としていない各種の病気<合併症>

尿酸を直接的な原因とはしていないものの、尿酸値の高い人や通風を発症した人たちに起こりやすい一連の病気が、厳密な意味での「痛風の合併症」に分類されます。痛風の合併症には、主に以下の8種類があります。

慢性腎臓病(CKD)

恒常的に腎臓の機能が低下し、タンパク尿、血尿などを生じている状態のことを慢性腎臓病と言います。重症化すると、夜間の頻尿や貧血、だるさ、むくみ、息切れなどの自覚症状を覚えることも。成人の8人に1人は慢性腎臓病とされ、昨今では「新たな国民病」と言われることもあります。

高血圧

かねてより痛風と高血圧には、密接な関係があると言われています。両者の関係を裏付ける様々な研究データも、国内外から数多く報告されています。ともにメタボリック症候群がベースに見られることが多いため、関連して発症するのではないか、という説が一般的。

ニキビ大の瘤が耳に生じることもあれば、ゴルフボール大、リンゴ大の大きな瘤が関節に生じることもあります。

肥満

肥満に至るプロセスは、痛風に至るプロセスと酷似している場合があります。肥満の原因は尿酸ではないものの、プロセスが共通する以上、両者には合併症としての関連が認められます。

高血糖・糖尿病

高血糖・糖尿病の主な原因は、暴飲暴食や運動不足。痛風の主要な原因もまた、暴飲暴食や運動不足。原因が似ていることから、痛風患者には高血糖や糖尿病が見られることがあります。

脂質異常症

脂質異常症とは、血中のコレステロール値や中性脂肪値が一定基準を超過した状態のこと。いわゆる「ドロドロ血」のことです。かつては「高脂血症」と呼ばれていました。脂質異常症の主な原因は、やはり暴飲暴食や運動不足。痛風の原因に通じるものがあります。

動脈硬化

脂質異常症が悪化すると、やがて動脈が硬くなったり、動脈内に瘤(コブ)のようなものが生じたりすることがあります。この状態を動脈硬化と言います。動脈内の瘤が血流に乗って体内を移動した場合、脳梗塞などを発症することがあります。

狭心症・心筋梗塞

冠動脈(心臓につながる太い血管)に動脈硬化が発生すると、血管の壁の一部が剥がれるなどして血流が妨げられることがあります。いわゆる狭心症・心筋梗塞です。激痛を伴い、処置が遅れれば死亡に至るケースもあります。

脳梗塞

血管内に生じた動脈硬化の瘤が血流に乗って移動し、脳の血管内で詰まってしまった状態を脳梗塞と言います。詰まった箇所の先には血液が送られなくなるため、急速に脳細胞が壊死。予後には後遺症を患う人も多く見られます。脳梗塞の発症部位やレベルによっては、突然死に至る場合もあります。

自覚症状がほとんどない慢性腎臓病

痛風の合併症のうち、直接命に関わる症状は、慢性腎臓病・心筋梗塞・脳梗塞の3つ。これらのうち慢性腎臓病は少々趣が異なる症状なので、ここでよく理解をしておきましょう。

腎臓は「沈黙の臓器」

「沈黙の臓器」と言えば、肝臓をイメージする人が多いと思います。末期症状に至るまで自覚症状がないことから、肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれています。

しかしながら「沈黙の臓器」は、肝臓だけではありません。末期に至るまで自覚症状がないという点において、腎臓も「沈黙の臓器」です。

肝臓と同じく腎臓も、何らかの症状を自覚した時点で、すでに命のリスクが差し迫っているという点、十分に理解しておきましょう。

慢性腎臓病を放置すると腎不全に至る

慢性腎臓病に至っても、重症になるまで自覚症状はありません。慢性腎臓病の末期とは、いわゆる腎不全の一歩手前。この状態を放置すると、やがては尿毒症を発症し死亡に至ります。延命するには、腎機能の代わりとして、一生涯、定期的に人工透析を受けなければなりません。

人工透析が始まるとライフスタイルが変わる

人工透析技術の誕生により、腎不全は死に至る病ではなくなりました。しかしながら人工透析がスタートすると、患者自身はもとより、家族までもがライフスタイルの変更、ひいては人生設計の変更を余儀なくされます。

一般に、透析治療は週に3回の通院が必要で、かつ、1回あたり4時間の治療時間を要します。毎週、実に12時間もの治療を受けながら一生を過ごしていく、ということです。今までと同じ職場で働き続けることは、困難になるかも知れません。その結果、収入が激減し家族の生活が厳しくなる事態も想定されるでしょう。

痛風の合併症で発症する恐れのある慢性腎臓病。その恐ろしさを十分に理解しておかなければなりません。

まとめ

痛風の背後には「激痛」よりも
恐ろしい症状が隠れている

痛風が様々な合併症を併発する病気であることを理解できたでしょう。痛風と言えば「激痛」ばかりが注目されがちですが、その「激痛」の背後には、命にも関わる恐ろしい病気がたくさん隠れていることを自覚しましょう。

ご自身のため、そしてご家族のため、痛風を予防・改善する取り組みを今すぐにでも初めてください。