メタボの基準を知る
現在、高尿酸血症の患者は500万人以上を超えると言われており、その約70%がメタボリックシンドローム(以下、メタボ)の可能性があると言われています。つまり、高尿酸血症の人はメタボである可能性があり、反対に、メタボと診断された人は高尿酸血症の可能性があるといえるわけです。
では、そんな尿酸値と関係が深いメタボとは一体どんなもので、どんな病気につながる恐れがあるのでしょうか…?
まず、メタボがどのような状態を指すのかというと、内臓脂肪が多く付いており、糖尿病をはじめとした生活習慣病を発症しやすく、また心臓病や脳などの血管の病気につながりやすい状態を指します。デスクワークや車移動などで日頃から運動不足になりがちなうえに、栄養が豊富に摂れる現代社会においては、非常に身近な存在と言えるでしょう。実際、メタボ人口が増えていることは間違いありません。
では、どんな人がメタボと診断されるのでしょうか…?それは、内臓肥満(ヘソの高さで腹囲が男性:85cm以上、女性:90cm以上)であることに加えて、空腹時血糖値・血圧・脂質(中性脂肪・HDLコレステロール)の基準のうちどれか2つ以上が当てはまる場合に、メタボと診断されます。
メタボリックシンドロームの内臓脂肪の蓄積について
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪が蓄積している状態を指す言葉です。臓器の間にある腸間膜など、内臓のまわりに脂肪が溜まって大型化した脂肪細胞が蓄積した状態に。いわゆる内臓脂肪型の肥満です。
メタボリックシンドロームの状態になると、さまざまな生活習慣病のリスクが高くなり、痛風発作のもとである尿酸値の上昇にも関係があると考えられています。メタボリックシンドロームでリスクが高くなる病気としては、高血圧や糖尿病など。そのほか、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす動脈硬化の原因となることもあるため、大変危険なのです。
内臓脂肪と皮下脂肪の違い
人間の体につく脂肪は、主に2種類あります。それが内臓脂肪と皮下脂肪です。内臓脂肪も皮下脂肪も、同じように肥満の原因となる脂肪ですが、同じように肥満になっても、その脂肪の付き方によって健康に関わるリスクが異なります。
皮下脂肪は腕やお尻、太ももや下腹部などにつきやすい脂肪で、ボディラインが崩れる原因になるものです。動脈硬化などを引き起こす生活習慣病の発症原因としては、内臓脂肪の方がリスク高めとなります。実際に目立って気になるのは皮下脂肪かも知れませんが、内臓脂肪の方が怖い一面を持っているかも知れません。
内臓脂肪の蓄積で遊離脂肪酸が作られる
ボディラインを崩すだけでなく、生活習慣病の原因にもなってしまう脂肪。特に内臓脂肪は、健康を考えるうえでリスクが心配です。内臓脂肪の増加によって注意しなければならないこととして、遊離脂肪酸の問題があげられます。遊離脂肪酸とは、脂肪細胞の中に蓄えられた中性脂肪が分解してできるもの。分解され、血液中に放出されることで遊離脂肪酸になります。遊離脂肪酸は、体を動かすエネルギー源として働くものの、余ると中性脂肪に再合成されることに。また、水と脂肪を馴染ませる性質を持っているため、多くなると細胞膜を溶かして細胞を破壊する恐れがあります。心臓を動かすエネルギー源となる一方で、心臓の状態が良くないときには心不全のリスクになってしまうのです。
尿酸と脂肪酸の関係
肥満やメタボリックシンドロームの人は、痛風や高尿酸血症などを引き起こしやすいと言われています。その理由は、尿酸の生成過程にメタボリックシンドロームが大きく関係しているためだと考えられているのです。メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積によって起こるもの。蓄積した内臓脂肪から生まれる遊離脂肪酸が、プリン体の代謝を高めて尿酸をたくさん作りやすくし、痛風などを引き起こすとされています。
尿酸を増やす遊離脂肪酸
内臓脂肪が多いメタボリックシンドロームの人は、脂肪から生まれた遊離脂肪酸が尿酸を増やすことで、痛風や高尿酸血症を引き起こす可能性があると考えられています。遊離脂肪酸が分泌されると、血流とともに肝臓に運ばれることに。するとプリン体の代謝が促進されて、老廃物である尿酸が作られるというメカニズムです。そのとき肝臓では、中性脂肪の原料である脂肪酸が合成されると同時に、プリン体の合成も促進されると考えられています。さらに、内臓脂肪が増えすぎると、インスリンの効きが悪くなってしまい、腎臓の排泄機能も低下して、尿酸排出も進まなくなるため注意が必要なのです。
内臓脂肪を減らせば、尿酸値も下がる
内臓脂肪が深く関係しているメタボリックシンドローム。さまざまな側面から考えると、内臓脂肪はメタボリックシンドロームだけでなく、尿酸値や痛風発作にも影響することがわかりました。メタボリックシンドロームは健康診断でも検査されますが、検査の診断基準としては、ウエスト周囲径、血清脂質、血圧、血糖値の基準があるものの、尿酸値は入っていません。しかし、メタボと痛風・尿酸値の関係は深く、内臓脂肪を減らすことによって、尿酸値を下げる効果も期待できます。
ダイエットと痛風予防の両立が可能
内臓脂肪と尿酸値の関係は深く、メタボリックシンドロームの診断を受けた場合には高尿酸血症のリスクも懸念されます。メタボリックシンドロームの改善にはダイエットが重要ですが、高尿酸値を下げて痛風予防するにもダイエットは非常に有効です。基本的には、メタボリスクを知るためにも、尿酸値の検査結果をチェックしておくことが重要となります。そのほか、アルコールの摂取量を減らしたり、食事を見直すなどの生活習慣を改善したりすることで、ダイエットと痛風予防の両立も期待できるのです。
尿酸に注意したダイエット方法が必要
メタボリックシンドロームの改善につながるダイエット。ですが、尿酸値の高い人や痛風発作のリスクが高い人においてはダイエット方法に注意が必要となります。特に、ダイエットでは運動が勧められますが、尿酸値のコントロールが必要な人にとっては、運動の種類によってはリスクが高くなることも。運動には有酸素運動と無酸素運動があり、どちらもダイエットには向いています。しかし、筋トレのような無酸素運動は尿酸値を上げる恐れがあるのです。通常であれば、基礎代謝を高める筋トレはダイエットに役立ちますが、痛風リスクを考える場合には注意が必要となります。
メタボリックシンドロームが引き起こす怖い病気とは…?
メタボの定義と基準が分かりましたね。
では、ここからが本題。最も気になる、"メタボによって引き起こされる可能性のある病気"について紹介していきましょう。
メタボと診断された人は、そうでない健康な人と比較したときに、なんと2型糖尿病を発症するリスクが3倍~6倍にもなると言われています。恐ろしい数字だと思いませんか?
他にも、心血管疾患とそれによる死亡リスクは1.5倍~2倍。また、高尿酸血症、腎臓病、非アルコール性脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群などの病気にもつながりやすいとされています。
メタボは自覚症状がないことも多いのですが、だからといって放置しておいてよい状態では決してないということが、よく分かりますよね。
生活習慣病と尿酸値の関係をチェック!
さて、高尿酸血症の人はメタボの疑いもあり、またそのメタボから、とても恐ろしい病気へつながるケースもある…ということが分かりました。
ここで、もう1つ知っておきたいことがあります。それは、"尿酸値を見れば、生活習慣病が進行しているかどうかも推測できる"ということです。
なぜ尿酸値によって生活習慣病の進行具合が推測できるのかというと、生活習慣病を引き起こす原因が、過食や運動不足などによる肥満、アルコールの飲み過ぎなど、高尿酸血症を引き起こす原因と重なっているためです。メタボの先にあるのが生活習慣病…という点を考えれば、このことも頷けますよね。
そのため、もし自分の尿酸値が高いことが分かったら、痛風や尿路結石といった具体的な症状がなくとも、日頃の生活習慣や食事を見直すなど対策を行ない、尿酸値を下げるよう努力することが大事です。生活習慣病は、ときに命に関わる病気へと発展します。

メタボはちょいポチャがかわいい以外はいいことナシ
さて、ここまで、尿酸値とメタボ、そして生活習慣病の関係について解説してきました。
腹部がぽっちゃりしている方は、そのまあるいフォルムが愛らしく見える…なんてこともありますが、触り心地にうっとりするというメリットがあったとしても、身体にとっていいことはあまりないと言えるでしょう。
メタボを引き起こす生活習慣病は自覚症状がほとんどないまま進んでいってしまうこともあり、そのため放置されやすいのが特徴です。しかし、放置してしまうと動脈硬化を進行させることになり、心臓病や脳卒中などの命に関わる大きな合併症につながりかねないので、くれぐれも気を付けたいものです。