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「魚卵にはプリン体が多い」は本当か?

「魚卵にはプリン体が多い」「プリン体が多いイクラは控えるようにしている」という話をよく耳にします。もはや、プリン体を多く含む食材と言えばビールと魚卵、というイメージも定着してしまった感がありますね。

ところで、これらの噂は本当なのでしょうか?どのような科学的根拠に基づいて「魚卵にはプリン体が多い」との説が流れているのでしょうか?

ここでは、魚卵とプリン体の真実について解説します。冒頭から意外な結論を目にすることになるでしょう。

魚卵のプリン体が際立って多いわけではない!

魚卵に含まれるプリン体の量は、他のカテゴリの食材に比べて、際立って多いわけではありません。

プリン体の代名詞のように扱われるイクラにいたっては、プリン体の含有量がゼロではないものの、実質的にはほとんど含まれていないも同然です。

ついでながら、魚卵に関連して補足します。

一部の専門家すら「プリン体を多く含む」と語る鶏卵。鶏卵にはプリン体などまったく含まれていないので、誤解のないようにしてください。

「嘘でしょ?」と思うか「騙された!」と思うか「それは朗報だ!」と思うかは人それぞれでしょうが、科学的な事実としては上記の通りです。

魚卵と他の食材のプリン体の量を比較

プリン体の研究に関しては、かねてより帝京大学が積極的に行なっています。以下、同大学医学部・薬学部の研究チームが公表しているデータを参照しました[注1]

魚卵に含有されるプリン体の量
イクラ 3.7
キャビア 94.7
タラコ 120.7
とびこ(醤油漬け) 91.5
カズノコ 21.9
スジコ 15.7
とびこ 67.8
明太子 159.3

(mg/100g)

これら魚卵の中で、もっともプリン体の含有量が多いものが明太子。100gあたり159.3mgなので、1日に約250gを食すと、プリン体摂取量の上限値とされる400mgに達します。

一方で、プリン体の代表格とされているイクラについては、100gあたり3.7mg。上記の魚卵の中では最低の含有量です。実に、1日に11kgほどのイクラを食べない限り、プリン体上限値の400mgには達しません。

1日に明太子を250g食べている人は、いるかも知れませんが、極めて少数派でしょう。まして、1日に11kgものイクラを食べている人は、皆無でしょう。

キャビアのプリン体含有量は100gあたり94.7mgと多めですが、キャビアを1日に100gも食べる人は、いるのでしょうか?

魚卵には、イメージされるほどの大量のプリン体が含まれている訳ではない、ということを認識しましょう。

魚卵以外の食材に含有されるプリン体の量
鶏レバー 312.2
タラ白子 559.8
太刀魚 385.4
納豆 113.9
鶏卵 0.0
牛乳 0.0
アンキモ(酒蒸し) 399.2
スルメイカ 186.8
マイワシ 305.7
ブロッコリー 70.0
うずら卵 0.0
はちみつ 0.9

(mg/100g)

鶏レバーやアンキモ(酒蒸し)にプリン体が多く含まれていることは、すでに痛風を気にしておられる方には常識でしょう。

それぞれ100g少々を食せば、1日のプリン体摂取量上限値である400mgに達します。他の食材から摂取されるプリン体も含めれば、それぞれ100gを摂らずしても簡単に400mgを超えてくるでしょう。白子にも要注意です。

一方、思ったよりも多くプリン体を含んでいる食材が、スルメイカや太刀魚、マイワシなど。特に、太刀魚やマイワシには要注意です。ともに100g程度の量であれば、普通に食してしまうでしょう。

納豆は野菜由来、ブロッコリーは野菜そのものであるにも関わらず、野菜一般の中ではプリン体の含有量が多めです。他の食材からも摂取するプリン体を考慮すれば、納豆・ブロッコリーも、過食は控えたほうが良いでしょう。

それに対して鶏卵、うずら卵、牛乳、はちみつなどは、いかにもプリン体を多く含むイメージがありますが、実際、これらにプリン体はほとんど含まれていません。

ただし鶏卵等を食べ過ぎると、プリン体とは別の理由で尿路結石を悪化させる恐れがあるので、過剰に食すことは控えましょう。

「魚卵にはプリン体が多い」という噂の根拠

噂の根拠1:厚生労働省の見解

厚生労働省が公表している「生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット」には、高尿酸血症予防の啓蒙を趣旨とし、以下のような解説が見られます。抜粋してご紹介します。

「レバーや魚卵などプリン体の多い食品ばかりに偏った食事や多量飲酒(特にビールに多く含まれます)などを控えることが大切です」[注2]

「食事の量とともにすべての種類のアルコールの量を減らし、脂肪分の多い食事やプリン体の多い食事(タマゴ・魚卵・肉・魚・塩辛など)を控える、水分と野菜を多くとる、軽い有酸素性運動を行う、といった生活改善が必要です」[注3]

プリン体そのものの解説文においても、以下のような記述があります。

「一般的にレバー・イクラ・タラコなど細胞数の多い食品には多く含まれ、アルコール飲料ではビールに多く含まれています」[注4]

ところで日本痛風・核酸代謝学会は、プリン体の含有量の多寡について、次のように規定しています[注5]

  • 400mg/100g…プリン体が極めて多い
  • 200~300mg/100g…プリン体が多い

つまり同学会では、プリン体が200mg未満の食材について、特段にプリン体が多い食材とは認識していません。

ひるがえって厚生労働省が「プリン体が多い」と説明する食材を確認するに、「魚卵」は、いずれの種類も200mg/100g未満です。イクラにいたっては、上で説明した通り3.7mg/100g。厚労省が言う「タマゴ」とは鶏卵のことを指すと思われますが、そのプリン体の含有量はゼロです。

帝京大学の研究データ、日本痛風・核酸代謝学会の認識、厚生労働省のコメント。これらの情報が錯綜していることが理由となり、世の中には様々な噂が生成されているようです。

噂の根拠2:細胞核が多いという誤解

プリン体は、細胞の中にある細胞核1つに対して1単位含まれます。よって、細胞の数が多ければ多いほど、その食材にはプリン体は多く含まれている、ということになります。

ところで、魚卵の細胞の数は、実は多くはありません。なぜならば、かの卵1粒1粒が、それぞれ細胞1個のようなものだからです。魚卵1粒が1つの細胞と考えた場合、その数が多い訳ではないことが分かるでしょう。

鶏卵も同じ理屈です。タマゴ1個がほぼ細胞1個と考えれば、含有されるプリン体がほぼ0mgである理由も納得できます。

魚卵は、外観上、あたかもたくさんの細胞が存在しているかのような印象を受けます。その印象が誤解を生んで「魚卵はプリン体が多い」という噂へとつながった側面はあるでしょう。

噂の根拠3:コレステロール値との混同

痛風を患う人、または痛風予備軍の人は、概してメタボリック症候群の傾向にあります。メタボリック症候群の人にとっては、プリン体はもちろん、コレステロールの過剰摂取も控えなければなりまえん。

ところで世の中には、コレステロールを多く含む食材はプリン体も多く含むという認識があるようです。しかしながら、両者はまったく無関係。コレステロール値の高い鶏卵には、プリン体が一切含まれていません。イクラやカズノコもコレステロール値が高い食材ですが、プリン体の含有率は極めて低めです。

一方で、アンキモやレバーのように、コレステロールもプリン体も共に多く含む食材も少なくありません。

これらの事態がゴチャゴチャとなり、結果、「コレステロール値の高い魚卵にはプリン体が多く含まれる」といった混同認識が生まれたのでしょう。

魚卵にはプリン体が少ないが、トータルでのプリン体摂取量には注意すること

魚卵にはプリン体が多く含まれる、という噂は誤りであることが分かりました。ただし、上記の表で示した通り、魚卵の中でもタラコや明太子に含まれるプリン体は少々多めであり、かつ、つい食べ過ぎてしまうこともあるので注意しましょう。

尿酸値が高い方にとって、魚卵のプリン体が少ないことは朗報かも知れませんが、問題は1日のプリン体の摂取量。1日400mgを超えないよう、他の食材とのバランスも考えた食生活を送るようにしてください。