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痛風の原因「高尿酸血症」が発症しやすい年齢は?

「ぜいたく病」とも言われる痛風。その原因となっているものは、主に不摂生な生活習慣の蓄積とも言われているので、若い人よりも年配の人、女性よりも男性に発症率が高いようなイメージがあります。

果たしてこのイメージは正しいのでしょうか?ここでは、痛風の原因である高尿酸血症と年齢との関係を中心に、性別との関係にも触れつつ解説します。

全年齢層において高尿酸血症の比率は上昇中!

高尿酸血症の罹患率を年齢別で見てみると、最も比率の高い年代が30代。しかしながら、30代における痛風の発症率は、より上の年代に比べて圧倒的に低めです。数値自体が、何やら矛盾を起こしているようにも感じます。

また、近年は全年代における尿酸値は上昇傾向にある一方で、国民のカロリー摂取量は減少傾向にあります。かねてから尿酸値と肥満との深い関連は指摘されているところなので、こちらもまた理解に苦しむところです。

これらの数値の不可思議に何ら矛盾がないことについて、以下、データを基にしつつ考察しています。

年齢別・性別における高尿酸血症の発症頻度

年齢が上がれば上がるほど発症リスクが上がると考えられている痛風。しかしながら、痛風の原因となる高尿酸血症の罹患率については、実は30代が最も多いというデータが得られています。

高尿酸血症の年齢別発症頻度では30代男性が高い

高尿酸血症の年齢別発症頻度について、過去、国内では大規模な調査が2度行われました。これらのデータによると、成人男性における高尿酸血症の罹患率は1度目の調査で21.5%、2度目の調査で26.2%。特に30代男性における高尿酸血症の罹患率は最も高く、2度目の調査の時には「30代全体の30%以上が高尿酸血症を患っている」との結論が得られました。

高尿酸血症の行く末は、痛風です。尿酸値が高い状態が長期的に続くことにより、関節付近に結晶が生れて痛風を発症します。

ところで痛風は、一般に年齢の高い人ほど発症しているイメージがあります。30代という若い人たちに特に多く発症する病気、というイメージがありません。

しかしながら客観的データを見る限り、痛風の原因である高尿酸血症の発症比率は、30代が最も高いという結果。さらには、年齢を重ねるにつれて高尿酸血症の罹患率が下がっていく、という現象も見られます。

この不可思議な矛盾については、後ほど考察します。

痛風の年齢別発症頻度では高齢男性が高い

「高尿酸血症イコール痛風」ではありません。尿酸値の高い状態が長く続いた場合、中には痛風を発症する人もいる、ということです。たとえ20代、30代の若さで高尿酸血症と診断されたとしても、その罹患期間が短い場合、痛風の発症まで至るケースは多くはありません。この理屈から考えた場合、年齢別の痛風患者の数に矛盾はありません。

2004年の国民生活基礎調査(男性対象)によると、痛風患者が最も多い年代が60代。次いで僅差で50代となっています。70代の患者数も少なくありません。これら50~70代が、全痛風患者の圧倒的多数を占めています。

大きく水を開けられる格好で、次いで40代の患者数が多め。次に30代の痛風患者数が続きますが、その痛風患者数は、60代の痛風患者数の1/4以下となっています。

概ね、年齢が高ければ高いほど痛風を発症する確率が高くなる、ということが分かるでしょう。これは即ち、「高尿酸血症の罹患歴が長いと痛風に至る可能性が高まる」という理屈を裏付ける形にもなります。

数値が矛盾している背景を考察

ところで、なぜ高尿酸血症の年齢別比率において、30代が最も高い数字を示しているのでしょう?さらには、なぜ年齢が上がるにつれて高尿酸血症の罹患率が下がっていくのでしょう?

この背景には、尿酸降下薬の服用者数の違いがあると推察されます。

たとえ高尿酸血症を指摘されたとしても、30代で痛風を発症してしまう人は少数派です。痛風を発症しない限り、高尿酸血症に自覚症状はないため、多くの30代は通院せずに症状を放置しています

ところが、高尿酸値を放置したまま50代、60代と年を重ねると、やがて痛風を発症してしまう人が増加します。通院して治療を受けると、多くの場合、尿酸降下薬を服用することになります。同薬を服用すれば、当然、尿酸値は下がってきます

これらの背景から「年齢が上がるほど痛風の患者数が多くなる」「高尿酸血症の罹患比率は30代が最も高い」「年齢が上がるほど高尿酸血症の罹患比率が減少していく」という一連の矛盾が、概ねスッキリとします。

女性は閉経後に尿酸値が上がりやすい

痛風は、主に男性に見られる症状。女性においては女性ホルモンの働きが尿酸値の上昇を抑えるとされ、男性に比べると痛風の発症者数は多くはありません。

しかしながら女性は、閉経によってホルモンのバランスが大きく変わります。

日本人女性の平均的な閉経年齢は、45~55歳。一方、女性における高尿酸血症の罹患率は、50歳未満で1.3%、50歳以降で3.7%です。閉経を機にした女性ホルモンのバランス変化が、尿酸値に何らかの影響を与えていることが分かります。

高尿酸血症になる原因

高尿酸血症になる原因としては、大きく分けて3つのタイプがあります。尿酸を排出しにくいタイプや尿酸を作り過ぎてしまうタイプ、さらにその混合タイプです。これらの特徴を、それぞれ詳しくご紹介します。

尿酸排泄低下型

高尿酸血症の原因の一つに、尿酸を排出しにくくなることで増えてしまう尿酸排出低下型があります。尿酸を作りだす量は普通ですが、腎臓から尿酸を排泄する機能が低下して、血液中に残ってしまう状態。高尿酸血症を引き起こす要因の60パーセントを占めると言われています。これは遺伝や肥満が関係しているほか、腎臓と腸管の尿酸排出の低下によっても起こるものです。

また、尿酸排泄機能の低下は、インスリンも関係すると考えられています。血液内の尿酸の量を示す血清尿酸値と血清インスリン値は、互いに関連しあう数値。インスリンは尿酸の再吸収を促進する働きも持っており、インスリン作用が亢進(こうしん:高い度合にまで進むこと)することで尿酸排出作用が低下し、尿酸値が上昇するようです。

尿酸産生過剰型

高尿酸血症のなる原因のもう一つに、尿酸を作り過ぎてしまうタイプがあります。尿酸産生過剰型と呼ばれるもので、高尿酸血症を引き起こす要因の10パーセントを占めるタイプです。これは、体内で尿酸を生成しやすくする成分を含む食品をたくさん摂取したり、激しい運動を行ったりすることで起こりやすくなっています。また、白血病や炎症性疾患などの病気も引き起こす原因です。

尿酸産生過剰型は、肥満と深く関係しています。過剰なカロリーを摂取することで肝臓による脂肪合成が亢進し、その後の代謝、合成のメカニズムの中でプリン体の生合成も亢進すると考えられているのです。プリン体は尿酸を増やす成分の一つ。高尿酸血症や痛風を引き起こす大きなリスクとされるものです。

混合型

高尿酸血症を引き起こす主な原因としては、尿酸排出が低下する排泄低下型と、尿酸を作り過ぎてしまう尿酸産生過剰型があります。しかし、この2つのタイプのうち、どちらの性質も持っている第三のタイプの人もいるのです。それは排泄低下型と産生過剰型を併せ持つ混合型と呼ばれ、全体の30パーセントの割合を占めています。混合型は、圧倒的に多い排泄低下型に次いで、2番目に多いタイプです。

近年における高尿酸血症の発症頻度の推移

近年、20~60代の全年代において、高尿酸血症の罹患率は上昇傾向にあります。数値改善のためには食習慣の見直しが前提となりますが、しかしながら、単にカロリー摂取量を減らすだけでは根本的な解決にはならない、ということが分かりました。

全年代において高尿酸血症の発症頻度が増加傾向

1996~2004年における高尿酸血症の発症率の調査では、20~60代の全ての年齢層において、高尿酸血症の発症率が上昇しています(「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版」)。

ところで高尿酸血症は、いわゆるメタボリック症候群と密接な関係があるとで有名。高尿酸血症の行く末に待つ痛風は、俗に「ぜいたく病」と言われます。やはり時代が進むにつれ、私たちの生活はぜいたくになって行ったのでしょうか?ひいてはメタボ、肥満の人の比率が増えたということなのでしょうか?

肥満は増加傾向、摂取カロリーは減少傾向にある

厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、男性は、30~60代の全ての年齢層において、肥満の人の比率が増加傾向にあります。

しかしながら、同じ国民健康・栄養調査によると、全ての年齢層において摂取カロリーは減少傾向にあるとのこと。摂取カロリーが減少する一方で、肥満の人数が増えているという事態を、私たちはどのように考えれば良いのでしょう?

背景にあるのは、運動不足でしょう。摂取カロリーを減らしても体を動かさなくなれば、徐々に肥満が進行していくことは容易に想像ができます。

なお、大学新入生の経験調査においては、BMI(太り気味かどうかを判断する基準)は低下傾向にあります。つまり、肥満の人が減ってきているということです。その一方で、大学新入生の尿酸値は上昇傾向にあります。

この矛盾の背景にあるのも、やはり運動不足。大学生の体重は減少傾向にあるものの、運動不足によって体脂肪率は増加している、ということなのでしょう。

【参考】禁煙すると尿酸値が上がる?

先に挙げた1996~2004年における高尿酸血症の発症頻度の調査において、少々興味深いデータがあります。調査の途中で禁煙した人は、尿酸値が上昇する傾向にある、というものです。

同調査によると、喫煙習慣に変化がなかった人(禁煙しなかった人、または喫煙習慣がなかった人)においては、1996~2004年の間で、尿酸値が平均0.3mg/dLほど上昇しています。

それに対して、調査の途中で禁煙した人においては、同期間において、尿酸値が平均0.7mg/dLほど上昇しています。

昔から「タバコをやめると太る」と言われていますが、確かに、禁煙後から過食傾向に陥る人も少なくありません。「尿酸値のコントロールを必要とする人が禁煙する場合、併せて食事指導をする必要がある」と同調査を報告した研究者は指摘しています。

特に若い世代は、尿酸値をコントロールする意識を持つことが重要

以上、高尿酸血症や痛風に関する数値データに基づき、いくつかの考察をしてみました。

この考察において導き出される最も重要なことは、「若いうちに尿酸値をコントロールするよう意識する」ということ。50代、60代で痛風の発症率が激増している背景には、20代、30代の頃に尿酸値のコントロールを意識してこなかったことが推察できるからです。

自覚症状がないからと言って高尿酸血症を放置した場合、多くの先輩たちと同じ轍を踏むことにもなりかねません。若い世代の人は、暴飲暴食を避け、かつ適度の運動をし、メタボリック症候群を寄せ付けないよう心掛けましょう。