痛風に似た病気は数十種類以上!速やかに病院で原因の特定を
「足の親指の関節が痛い」「最近、足の指やかかとが痛む」といった経験をすると、真っ先に思い浮かべる症状が痛風でしょう。
痛風は、もはや国民病の様相を呈しているほど知名度の高い病気なので、特に「足の親指の痛み」を覚えた人の大半は、自身の症状を痛風と考えても不思議ではありません。
しかしながら人間の体は、私たちが思っている以上に非常に複雑な作り。足の親指が痛むという症状に対しては、痛風の他にも数十種類もの病名が用意されています。ご自身の症状の原因は何なのかを知るためには、痛みを自覚したら速やかに医療機関を受診すべきです。
以下で説明しますが、中には、足の痛みから始まって短時間で死に至る恐ろしい病気もあります(劇症型溶結性連鎖球菌感染症)。痛みを放置せず、適切な行動をとるようにしましょう。
外反母趾
足の付け根の関節が内側に曲がるなどが原因で、痛みが生じる症状。変形した関節部分に炎症が生じた場合、痛風にも似た激しい痛みが生じることも。パンプスやハイヒールの圧力によって生じることが多いため、多くの場合は女性に発症します。後述する関節リウマチの一種として生じるケースもあります。
変形性関節症
関節と関節の間に存在する軟骨がすり減り、クッションの役割が低下することで発症する痛み。足の指関節に生じることはほとんどなく、多くは膝関節や股関節に見られる病気です。悪化すると歩行困難になることも。日常的に関節を酷使することが多い人に発症する例や、また、年齢が高めの人に発症する例がしばしば見られます。
蜂窩織炎(ほうかしきえん)
皮膚、または皮下組織に細菌が侵入して生じる炎症。細菌は、傷口や汗腺、毛穴などから侵入します。細菌によって生じた炎症により、腫れや痛みを伴うことがあるため、発症部位によっては痛風にも似た症状になることも。腫れ、痛みに加え、発熱などの全身症状に発展するケースもある危険な病気なので、早急に医療機関で治療を受ける必要があります。
変形性腰椎症
腰椎が変形して神経を圧迫している状態が変形性腰椎症。神経の連動の影響により、足に痛みを感じることもあります。痛風と勘違いして来院することが多い代表的症状の一つ。腰椎椎間板ヘルニアを患う患者にも、同様に神経の連動から足の痛みを感知する例が見られます。いずれの場合も患部は腰椎であり、通常、足には特に異常が見られません。
偽痛風
ピロリン酸カルシウムの結晶が蓄積し、痛みが発症する症状。同様に尿酸塩の結晶が蓄積した場合は痛風となるため、症状も原因も似ているとして偽痛風と名付けられました。痛風は主に男性に見られる症状でることに対し、偽痛風は男女関係なく見られる症状です。主に発症する部位は膝関節や足首。発症原因の大半は、加齢です。
関節リウマチ
関節内の骨膜と呼ばれる組織が異常増殖し、関節が破壊されて激しい痛みを生じる症状。骨膜が異常増殖する原因は、まだ明確には解明されていません。痛風が局所的かつ一時的な症状であることに対し、関節リウマチは全身的かつ慢性的です。関節症状の他に、各種の臓器障害を伴うこともあります。痛風とは反対に、女性に多く見られる症状。
回帰性リウマチ
関節が急に腫れ、痛みが発生する原因不明の症状。痛みの程度は痛風より軽く、かつ症状は2~3日で収まりますが、症状が反復して発症する点が痛風とはやや異なります。回帰性リウマチを生じた患者が、たまたま高尿酸血症であった場合、医師でも痛風と誤診してしまうことがあります。
モートン病
主に足の第3-4足趾間(中指と薬指の間)に、しびれや疼痛など、様々な不具合が生じる症状のこと。個人差により、第2-3、4-5足趾間に症状が現れる場合もあります。重症の場合、下肢まで痛みが走ることも。ハイヒールを常用する人や中腰の姿勢が多い人など、主につま先立ちをする時間が長い人に生じる傾向があります。中高年以降の女性の多く発症。
足底腱膜炎
足の裏の土踏まずの部分や、土踏まずからかかとにつながる部分などが炎症を起こし、痛みが生じる病気。中高年によく見られる症状として知られます。しばしば、足裏などに負担の多いアスリートにも見られる症状です。
踵骨後部滑液包炎
かかととアキレス腱の間にある滑液包という組織が炎症を起こし、かかと付近に痛みが生じる症状。運動などで、かかとに継続的な強い力が加わったときに発症します。また、かかとの骨の隆起が原因となって発症する場合もあります。
骨折・靭帯損傷
足の指などの骨折、あるいは靭帯の損傷により、痛みや腫れなど痛風と似た症状が起こることがあります。症状は痛風に似ているものの、直前に足をぶつけたりひねったりなど、原因に心当たりのある場合が多いため、痛風と間違えることは少ないかも知れません。
疲労骨折
足などの疲労骨折により、患部に痛みが生じることがあります。通常の骨折とは異なり、疲労骨折には直近の心当たりがないため、中には痛風と誤解してしまう人もいるかも知れません。整形外科などで適切な治療を受けるようにしましょう。
劇症型溶結性連鎖球菌感染症
いわゆる「人食いバクテリア」の感染により生じる症状。主として、発症の端緒が下肢の疼痛から始まるため、一時的には痛風と似た自覚症状を持つ場合もあります。症例は少なく、国内における感染者数は年間100~200人。進行が極めて速く、患者の約30%は死に至ります。大病院における早急な治療が必要です。30歳以上の人に好発。
痛風に似た病気には、他にもアキレス腱付着部炎、爪周囲炎、毛嚢炎など様々なものがあります。痛風はもちろんですが、ここで取り上げたいずれの症状であっても、放置すると症状が悪化するものばかりです。痛みを感じた場合には、我慢することなく速やかに病院で診療を受けるようにしてください。

自己判断を排除し、
速やかに専門病院を受診することが大事
たとえ痛風ではなかったとしても、それぞれの症状を解消しないことには、日常生活に支障をきたす恐れがあります。日常生活はおろか、命に関わる病気が潜んでいることも理解しておきましょう。
外観や症状は痛風に似ていたとしても、病院では、尿酸値の測定などをもとに、その症状が痛風であるのかどうかを正確に診断します。関節等に痛みを感じたら速やかに病院を受診し、各症状に応じた適切な治療を受けるようにしてください。
- 痛風発作とは
- 冷やしたほうがいいのか温めるべきか
- 女性も気をつけるべき
- 痛風を発症しやすいとき
- 市販薬で痛風を抑えられるのか
- 痛風初期症状
- 壊死する可能性
- 痛風にとっての漢方とは
- 衝撃!壮絶すぎる!痛風激痛体験談まとめ
- 民間療法?痛風に効く温泉
- 痛風発作は夏に頻発する
- プリン体ゼロ」「糖質ゼロ」と痛風との関係
- 痛風の様々な合併症
- 痛風の治療期間と治療費
- 痛風と糖尿病の密接な関係とは?
- 医師も間違えやすい?痛風に似た病気一覧
- お菓子と痛風の関係性
- 正しい方法で痛風を予防!
- 高血圧と痛風は密接な関連がある!
- 痛風の判断目安となる健康診断の数値
- 痛風・高尿酸血症と年齢との関係
- 痛風と遺伝の関係性とは?
- 年をとると痛風になりやすくなるのか