脱水と暴飲暴食が痛風発作の引き金となる!
厳密に言えば、痛風発作と季節との間に、何ら相関関係はありません。しかしながら現実として、冬よりも夏、春よりも夏、秋よりも夏に痛風発作は頻発します。
なぜ、痛風は夏に起こりやすいのでしょうか?
その理由を知る前提として、まずは痛風の原因、痛風の仕組みを知ることが必要です。原因と仕組みを知るだけでも、勘の良い人なら、夏に痛風が頻発する理由を推測できるでしょう。
そもそも痛風の原因とは?
痛風の原因は、尿酸値の上昇。尿酸値が上昇すると、関節を中心に、体内の色々な部位に結晶が生じます。この結晶が刺激となって、痛みや腫れを誘発している状態が痛風です。
通常、尿酸が生れると尿とともに体外へ排出されるのですが、あまりにも多くの尿酸が生成されてしまうと、排尿では十分に排出されません。この状態を、高尿酸血症と言います。
また、たとえ尿酸の量がさほど多くはなくても、尿量が少ないなどの理由で、十分に尿酸を排出できないこともあります。この状態も、高尿酸血症と言います。
いずれのメカニズムを経由するのであれ、高尿酸血症の状態が長期化すると、足の関節をメインに結晶が誕生。この結晶のいたずらが、痛風という現象です。
夏に痛風発作が頻発する理由
夏に痛風発作が頻発する理由は、何らかの原因によって、高尿酸血症の状態が生じているから。排尿では十分に尿酸が排出されないほど大量の尿酸が生れているか、もしくは、排尿量が少なくなって尿酸の排出量が減っているか、のどちらかです。
夏に痛風発作が頻発する理由は、果たしてどちらなのでしょう?答えは「どちらも」です。だからこそ夏には痛風が起こりやすくなるのです。
夏に大量の尿酸が生成される理由
夏は、他の季節に比べて解放感のある季節。日中より少し気温の下がってきた夕方、心地良い風に晒されながらビアガーデンを楽しむ、という人も少なくありません。ビアガーデンとは言わずとも、夏は、つい外食をしたくなる季節でもあります。
お酒好きには残念な話ですが、アルコールは尿酸を増加させる主要な原因の一つ。尿酸の生成量を増やすだけではなく、尿酸の排出を抑え込んでしまう、とてもやっかいな液体です。
加えて、アルコールには食欲増進作用があります。かつ、満腹感を麻痺させる働きもあります。ビールと共に、ついつい、おつまみの量が増え食べ過ぎになってしまうこともあるでしょう。お酒を飲んだ後のハイカロリーな胃袋に、とどめとしてラーメンを投入する男性もいます。
いかなる食べ物であれ、その中には、多かれ少なかれプリン体が潜んでいることを忘れてはなりません。プリン体は尿酸の材料。夏に起こりがちな過食は、単純に尿酸の量を増加させる大きな理由となるのです。
夏に排尿量が減少する理由
夏は気温が高いため、少々動いただけでも汗をかいてしまいます。適切な水分補給がなされていないと、いつの間にやら、体は脱水に近い状態に。脱水の状態では、尿の量が減少します。結果、尿酸を体外へ排出する機会を減らし、高尿酸血症へと至ります。
以上2つの理由により、夏は、体が高尿酸血症に陥りやすい状態になります。苦しい夏の夜間に、じわじわと痛風の痛みが襲ってくる理由も納得できるでしょう。
夏の痛風発作を予防する方法
尿酸の生成量を増やさないことと、尿の量を増やすことが、夏の通風発作を予防する方法です。そのためには、以下の4つのポイントを意識した生活習慣を心がけるようにしましょう。
アルコールの摂取量を減らす
上述の通りアルコールは、尿酸の量を増やし、かつ、尿酸の排出を邪魔します。適度な飲酒なら問題はありませんが、夏という季節に背中を押されてアルコールを過剰摂取することは控えましょう。
飲酒する場合は、1日につき、日本酒なら1合、ビールならロング缶1本、ウイスキーなら60mlを目安にしてください。
過食しない
どんな食材にもプリン体は潜在しています。たとえプリン体の少ない食材であっても、食べ過ぎればプリン体過多となり尿酸値が上がります。
タボリック症候群と痛風との関連性も指摘されていることから、食べ過ぎには注意が必要です。常に(たとえ酔っていたとしても)、腹八分目を意識してください。
加えて、野菜やキノコ、海藻類などを積極的に摂りましょう。尿酸の排出をサポートする食材だからです。
プリン体を多く含む食材を避ける
1日のプリン体の摂取上限量は400mgです。たとえ食べる量が少なくとも、プリン体を多く含む食材を摂取すれば尿酸値が上昇します。
プリン体が「極めて多い」とされている食材の代表は、アンキモ、レバー、干物、白子など。これら食材には、100gあたり300m以上のプリン体が含まれています。食べるにしても少量に抑えるべきです。
カツオやマイワシなど、日常的に食する魚類にもプリン体が多く含まれているので、食べ過ぎには要注意です。
ちなみに、プリン体が多い食材として認識されているイクラや鶏卵には、あまりプリン体は含まれていません。ともに「プリン体ゼロ」と言っても良い食材です。
水分を多く摂取する
夏は脱水に陥りやすいので、こまめに水分摂取をすることが大切です。摂取量の目安としては、食事以外から1日2リットル。普通の水やお茶だけではなく、より体への吸収効率の良いスポーツドリンクも飲むようにすると理想的です(スポーツドリンクの飲みすぎは肥満を招くことがあるので、その点は注意)。
以上4点のポイントを意識することに加え、週に3回程度は、適度な運動をしてください。運動を通じてメタボリック症候群を予防することで、尿酸値の上昇を抑えるためです。
ただし、体に過度な負担がかかる運動(筋力トレーニングなど)は、逆に尿酸値を上げてしまうリスクがあります。ウォーキングやラジオ体操など、「軽い運動」を「継続して行なう」ことがポイントです。
h4 高尿酸血症のセルフチェック
夏に痛風発作が頻発するとは言え、そもそも高尿酸血症ではない人は、さほど心配する必要はありません。逆に、1度も痛風発作を起こしたことがない人でも、高尿酸血症が疑われる人は予防的行動を採る必要があるでしょう。
あなたに高尿酸血症の疑いがあるかどうかについて、ここでセルフチェックをしてみてください。以下、東京女子医科大学教授の山中寿氏(同大学附属膠原病リウマチセンター所長)の出典を参考に編集しています。
1.血清尿酸値が
- 6.9以下…0点
- 7.0~7.9…1点
- 8.0~8.9…4点
- 9.0~9.9…7点
- 10.0以上…10点
2.痛風発作を起こしたことが
- ない…0点
- 1回ある…5点
- 2回以上ある…8点
3.血縁に痛風患者が
- いない…0点
- いる…3点
4.尿路結石と診断されたことが
- ない…0点
- ある…2点
5.20歳時より体重が10kg以上増えて
- いない…0点
- いる…2点
6.高血圧が
- ない…0点
- ある…1点
7.中性脂肪が高いと指摘されて
- いない…0点
- いる…2点
8.アルコール飲料は
- 全く飲めない…2点
- あまり飲めない…0点
- よく飲む…2点
9.ビールは
10.過食傾向が
- ない…0点
- ある1点
11.サウナ愛好家で
- ない…0点
- ある…1点
12.マシントレーニングや激しい運動をして
- いない…0点
- いる…1点
13.精神的ストレスが
- 少ない…0点
- 多い…1点
合計点が0~5点の人は、高尿酸血症の可能性が低いでしょう。6~10点の人は、日常生活において注意が必要です。11~15点の人には、専門医の受診をお勧めします。16点以上の人は、治療が必要です。
自分の数値と向き合い、必要な人はしっかりと対策を行ないましょう
すでに高尿酸血症を指摘されている人は、季節を問わず、常に生活習慣に気を配る必要があります。まして尿酸量が増え、かつ尿酸の排出量が減る夏においては、特に生活に注意してください。
高尿酸血症であるかどうかは、健康診断の数値で概ね判断ができます。しかし、その数値を注意して見ている人は少数派かも知れません。次回の検診からは、しっかり自分の数値と向き合うようにしましょう。