尿酸値の上昇や低下が腎機能障害の原因に…?
国内での高尿酸血症患者は、約500万人にのぼると言われています。そして近年、この高尿酸血症が、痛風のみならず高血圧症や動脈硬化、2型糖尿病といった生活習慣病にも密接に関わっていることや、腎機能障害の危険因子であることが明らかになり、尿酸値を正常に保つことの重要性がより注目されています。
以下に、尿酸値が高いことで起こり得る、痛風発作以外の症状を挙げてみました。
- 痛風腎(腎障害)…関節の次に尿酸結晶が沈着しやすいのが腎臓と言われています。尿酸結晶が腎臓の中で徐々に蓄積されていき、腎臓の働きを低下させてしまうのが痛風腎です。
- 慢性腎臓病…高尿酸血症の状態が続くと、慢性の腎臓障害(慢性腎臓病)が起こることもあります。血液のろ過機能が下がって老廃物の排出や水分調整ができなくなるほか、進行すると、通常の30%しか機能しない腎不全となってしまい腎移植や人工透析が必要になることもあります。
- 尿路結石…腎臓や尿管、尿道、膀胱といった尿の通り道に硬い結石ができるもの。高尿酸血症により尿が酸性に傾いて尿中の尿酸が溶けにくくなると、尿酸の結石や尿酸が核になってできるカルシウム結石が発生しやすくなるのです。結石ができる場所により症状は違いますが、とくに尿管の場合は腰から腹にかけてさし込むような激痛を感じます。通常は数日で治まりますが、放置すると再発をくり返すようになります。
ちなみに、尿酸値が低過ぎることも腎臓に影響します。
尿酸値が2mg/dL、1.5mg/dLあるいは1.0mg/dL以下の場合(低尿酸血症)、運動後の腎障害や、尿路結石などを発症するケース があると言われているのです。
より狭い範囲の尿酸値を保つことが大切!
尿酸が高くても低くても腎臓に影響を与えてしまうことは分かりましたが、「一般的に言われている基準値内なら問題ないでしょ?」と思った人も多いのではないでしょうか。しかし、実はそうでもないようです。
大阪市立大学の研究グループが、腎機能障害や生活習慣病、血清尿酸値異常のない健康な人を対象に尿酸と腎機能の関連について検討した結果、これまで想定されてきた尿酸値の範囲内(高尿酸血症:7.0mg/dL以上、低尿酸血症:2.0mg/dL以下)ではなく、より狭い範囲内で尿酸値を正常にキープすることが、腎臓の保護にとって重要であるということが明らかにされたのです。
尿酸は、基準値内であったとしても、“軽度の高値”“軽度の低値”であれば腎臓の微細動脈の血管抵抗値を上昇させ、腎機能低下に関連するといいます。
とくになりやすい「痛風腎」とは?
上で、尿酸値が高い場合に起こり得る痛風発作以外の症状をいくつか挙げましたが、なかでも多くみられるのが痛風腎です。この痛風腎について、少しくわしく解説しましょう。
上でも触れたとおり、尿酸の結晶が腎臓内で蓄積していき、その働きを低下させるのが痛風腎です。
腎臓は、血液をろ過して尿を作る働きがありますが、その過程において血液が濃縮されるため、他の部位に比べて尿酸値は高めの状態です。そのため高尿酸血症だと腎臓ではより尿酸結晶が沈着しやすくなってしまい、尿酸を排泄する働きが低下するのです。
そして腎機能低下、それによる尿酸排泄不良…という悪循環が繰り返されてしまい、腎不全などの深刻な疾病につながります。
尿酸値が高めの人は、関節炎だけでなく、この痛風腎をはじめとした腎臓の病気にも気を付ける必要があるのです。

尿酸値が高い人・低すぎる人は腎臓の病気にも気を付けよう!
ここまで、尿酸値が高い場合や低すぎる場合に起こり得る腎臓の病気について解説してきました。
痛風はもちろんですが、腎不全などの大きな病気につながるのを防ぐためにも、尿酸値は常に標準をキープできるよう心掛けましょう!